仕事の価値を高める「戦略的思考」の方法論
「戦略」とは何か?
戦略というのは、最終的に「1+1>2」となるようなシナジーのしくみをつくり出すことです。
「1+1=2」のままでは話になりませんし、「一石二鳥」や「王手飛車取り」くらいでは勝利や成功を確信するに至りません。
ひとつひとつの要素を成立させ、それらを体系的に組み合わせることでシナジーや好循環をつくり出すのです。
そんな工夫としくみづくりに長けた人こそが、「戦略脳」の持ち主だと言えるでしょう。
戦略を生み出すしくみ
「シナジー(synergy)」は日本語にすると「相乗効果」ですが、似たような意味を持つ日本語が他にもいくつかあります。
日本語表現を使って「戦略」のイメージを膨らませてみよう。
効果・しくみ | 似たような意味の日本語表現 |
---|---|
シナジー | 一石二鳥、一挙両得、三方善し |
レバレッジ | 相乗り、抱き合わせ、漁夫の利 |
アービトラージ | 両建て、利益確定、王手飛車取り |
戦略脳を身につける
戦略脳というのは、ものごとを戦略的に考えるセンスのようなものですが、一般的に「戦略脳を身につける」というのは容易なことではありません。
プロのサッカー選手でも戦略脳の持ち主はほんの一握りだと言えるでしょう。
ビジネスの世界でも、一部の経営者やコンサルタントにしか戦略脳は認められません。
戦略脳を身につけるためには、「難しくても何とか結果の出そうな目的」を見つけてチャレンジすることが大切です。
目的や問題の設定の仕方で導かれる戦略も変わってきますので、その設定段階こそが最重要プロセスと言えます。
実際「筋のいい問題設定」ができていないと、せっかく立てた戦略が裏目に出ることもあります。
戦略的思考の必要性
スポーツの試合でもビジネスにおける競争でも、「難しいけれど何とか勝ち残りたい」という局面にしばしば遭遇します。
しかし、競争相手もそのように思っているはずなので、ただ普通にやっているだけではなかなか勝てません。
そこで「戦略」が必要になります。
ビジネスにも、競合がいたり代替品があったりするので、なかなか一筋縄ではいかないものです。
立ちはだかる壁を乗り越えるには、何らかの工夫を凝らさなくてはなりません。
ビジネスで継続的な成果を上げるには、優れた商品開発や気の利いたサービスだけでは不十分です。
「事業計画」をつくってみればわかることですが、ひとつのビジネスを成功させるためには、まず次のような要素をそれぞれに成立させなくてはなりません。
- 顧客ニーズや経営資源など、アイデアの源泉や発想の背景
- 顧客への提供価値
- 市場環境への適応
- 一連のバリューチェーン
- 有効なマーケティング・販売手法
- ビジネスの継続性を担保するための財務戦略および人材戦略
そのうえでこれらを体系的にまとめ上げ、ひとつの機能をもった製品なりサービスなりへと昇華させていくのです。
こうした事業計画は「戦略」そのものであり、戦略的思考がきちんとできていないと、これだけ多岐にわたる要素を一体的かつシナジーが生まれるように設定することは困難です。
戦略的思考が紡ぎ出すものは、最終的にホリスティックな「何か」へと昇華します。
調和した全体は「1+1=2」以上のものになるということです。
たとえば車や飛行機も、元はひとつひとつの精巧な部品からでき上がっています。
どの部品も欠くことのできない要素として製品を構成しています。
しかし、でき上がった製品は単なる部品の集合体ではありません。
それ以上の「何か」として、新しい意味や機能を持つようになるのです。
家にしてもロケットにしても同様です。
そうした全体としての機能を果たさなければ、人命を危険に晒す欠陥品となるでしょう。
それぞれの部品に欠陥がなくても、それらをひとつにまとめ上げる段階で組み合わせの妙を見誤れば、それは見紛うことなく立派な欠陥品となるのです。
ビジネスやプロジェクトを成功に導くための「戦略」には、こうした現象をあらかじめ想定しておく「緻密さ」と「先を読む力」が求められます。
新分野を切り拓こうとする起業家や新たな挑戦をサポートするコンサルタントには、こうした戦略を生み出すための「戦略的思考」が必要です。
戦略的思考の方法論
戦略的思考を実践するには、まず次の2つの能力が必要です。
- 自由な発想力
- 緻密な論理力
異なるものを組み合わせて最適化しようとする戦略アイデアは、この両方を備えていないとなかなか思い浮かぶものではありません。
それから、「論点思考(イシュー思考)」も大切です。
戦略というのは、「答え」のある問題に取り組まないと出てきません。
その上で、要素のひとつひとつを同時進行的に進めていき、最後にそれらを一体的にまとめ上げることで、「部分の総和以上となる何か」を生み出すのです。それが戦略です。
戦略的思考のプロセス
戦略的思考のプロセスは、論点思考のプロセスとよく似ています。
それを目的する理由や背景を述べる。
目的を踏まえた上で仮説を立て、「答え」を想定しながら解決すべき問題(イシュー)を絞り込む。
「疑問文」をつくってイシューを定め、そのイシューを解決するためのストーリーを展開する。
「問題(イシュー)解決」までのプロセスを埋めるサブイシューを設定し、それぞれ解決するためのストーリーを展開する。
サブイシューを解決するための各ストーリーをつなぎ合わせ、全体イシューを解決するためのストーリーとして完成させる。
こうして全体イシューの解決策が導き出され、それが目的の達成に寄与するものならば、その解決策こそが「戦略」となる。
このように、戦略策定のプロセスは論点思考のプロセスと酷似しています。
ちなみに論点思考のプロセスというのは、概ね次のようになります。
- まず、答えが出る問題かどうかを直観的に見定め、考えるに値するかどうかを検証した上でイシュー(論点)を定める。
- イシューをその解を導き出すための「要素」に分解し、サブイシューを炙り出す。
- サブイシューの「答え」をひとつひとつ出していき、それらをつなぎ合わせることで全体イシューの「解」を導きだす。
戦略を考えるときも概ねこのようなプロセスをたどります。
「戦略の実行段階」では、考えた道筋を遡るように行動計画を立てればいいでしょう。
難しくても何とか達成できそうな「目的」を掲げないと戦略になりませんが、その辺も論点思考と共通しています。
- 各サブイシューを解決し、それらを体系的に組み合わせてまとめ上げる。
- まとめた結果としての「イシューの解決策」が目的に対して相応のインパクトを持てば、それが「戦略」となり得る。
- 要素を一体的にまとめ上げることで「部分の総和以上となる何か」を生み出せていれば、それは優れた戦略と言える。
戦略的思考で仕事の価値を高める
いま、多くの人が「人から喜ばれるような仕事がしたい」「価値のある仕事がしたい」と願っているはずです。それがこれまで現代社会を観察してきた自分なりの仮説です。
そこで、「仕事の価値を高められるような方法はないか」と真剣に考えるようになりました。そしてたどりついたのが「戦略的思考」です。
戦略的思考は、ときにすべての戦況をひっくり返すほどのインパクトを持ちます。同時に、さまざまな難局を打開できるだけの突破力をもたらします。
また何と言っても自分で考えて戦うための術を与えてくれます。
今回ご紹介した戦略的思考が多くの人にとって、「難しいけれど何とか達成したい目標」に挑んでいく原動力になればと願っています。
戦略的思考を本格的に学んでみたい方はこちら
ビジネスにおける「難しいけれど何とか解決したい問題」に真っ向から立ち向かう。
そのための勇気を与えてくれるのが「戦略的思考」です。
自分のセンスや向き不向きはやってみてから後でわかる話。まずは手順と方法論を学んでみませんか?